こんにちは。
福祉タクシーのアーク代表の横井です。

最近多くの総合病院に使っていただけるようになり、酸素を吸入しながらの移動が可能であるかというお問い合わせが増えてきました。
酸素を吸入しながらの移動はもちろん可能です。
これまでに当社も酸素吸入しながらの移動をお手伝いし、移動の時に使用した酸素吸入機器を病院に返すというサービスを幾度となくやってきました。

しかし、当社による酸素及び機器のご提供については、結論から申しますと、当社は医療用酸素のご提供をいたしません。
酸素吸入装置やボンベは患者様が病院などでお借りいただくことをお勧めしています。

では、なぜ提供できないかというと、酸素設備の提供自体が医療行為となり、損害賠償責任保険でカバーできないからです。
これは当社に限らないことで、現状で運送事業者が責任をもってご提供することが不可能です。

医療行為については、各医療機関は医療事故などに備えて損害賠償責任保険に加入しています。
これらの医療機関向けの保険では、医療機関が提供した酸素吸入行為について、流量などの医療的な判断ミスだけでなく装置の不具合や不適切な操作による事故もカバーされています。
医師の流量指示が適切でも、酸素の機械が故障して止まっていたとか、ボンベ残量がなかったとかいうことのほうが事故としてはありそうで、機器も含めての保険というわけです。

当社も酸素と装置提供のご要望にお応えするために、酸素の提供の責任関係にについて調べたことがありました。
しかし、当社が大手、準大手の保険会社に確認したところ、福祉タクシー業者が酸素機器の提供による事故をカバーする保険に加入することができない事がわかりました。
当社は運送によるお客様の損害は100%カバーされる旅客運送業専用の保険に加入しておりますが、これをもってしても医療行為の提供による損害はカバーされないということでした。
そして、酸素と装置のご提供は、それ自体が医療行為に当たるということです。
ということは、たとえ看護師、医師が同乗していたとしても、当社が提供した酸素設備で事故が起こったら保険でカバーできないということになります。

医療制度は、患者様と医療者を守るため、設備や体制を整えた組織を医療機関として認定し、資格を持った医師看護師、運用の規制など、2重3重のバックアップの上で運営されています。
そして、最悪の事態に備えて保険に加入するわけですが、医療機関向けの保険はそのような運営体制が整えられた医療機関を対象としており、体制のない組織が加入できるはずもありません。
実際、たとえ医師でさえも、医療機関の業務ではなく路上での通りがかりで気まぐれに治療し医療ミスを起こしてしまったら、保険でカバーされることはありません。

残念ながら当社も含め運送業者にそのような体制があるわけがありませんので、医療行為がカバーされる保険に加入できないのは当然というわけです。
こういう事情から、無責任に酸素設備や酸素の提供をしないという結論に達したわけです。

一部の運送事業者が酸素を提供していますが、非常に無責任な事業者であると感じます。
有資格者、看護師同乗などとうたってはいますが、責任を取ることができない状態でやっているのです。
知識、技術という問題ではありません。というか、おそらくそもそも危うい状態でやっているという認識すらないと思います。

酸素設備は病院にポータブルのものがあり、提供を受けることができます。
医療機関で提供を受けたものならば、万一の事故があってもその後の治療や慰謝料などの保障が受けられます。
(酸素機器の運搬は医療行為ではありませんので、当社のミスで運送中に酸素機器を落として壊したなどの事故は、当然当社がカバーすることができます。医療機関からレンタルした酸素設備ならば100%なんらかの保険でカバーされていることになりります。)
厚生労働省も、酸素の提供は医療機関から受けるように推奨してます。
あえてリスクを取って運送事業者の提供する酸素設備を利用するメリットなど、患者様にはありません。
大規模な総合病院では、運送中に使う機器の貸し出しに対応することが一般的な運用となってきていると感じます。

酸素を吸入しながらの移動をご希望の方は、いちど病院の患者相談室に運送中に使うポータブル機器のレンタルをご相談ください。
当社では、医療機関の担当者と連携の上、終わった後の機器の返却まで行うサービスを提供しております。
病院で酸素機器をレンタルすれば、機器のセッティングも出発時に患者様の状態を知っている医師か看護師が行います。
このほうが患者様の手間もなく安心です。
医療行為をあえて我々のような医療について素人のタクシードライバーに任せることはありません。

患者様の移動にはかなりリスクが伴います。
こういった事実を知ったうえで、安全安心な移動方法をご検討くださいね。